エッセイ・小説

【創作小説】風見鶏【vol.18】

なかなか会えない

ミサキとの邂逅があった週が明けたが、タクミはずっと「会えない」といったメッセージを送ってくるばかりだった。

私は物分かりがいい女風に「了解、忙しいのにメッセージしてごめんね」などばかり言ってしまう。

だが、その反面ではどうして会えないか不安な気持ちがあった。

もちろん、彼が会えない理由は仕事だろう。しかし、ミサキとの決着が付かなくて会うことを控えようとしているのかもしれない。

ミサキはこの間、私と会い、探りを入れてきたのだ。タクミが会えないのもミサキに関係があるのではないか。

しかし、私もミサキとのことを諫めるような資格はない。それは、私と夫がまだ、離婚していないからだ。

夫の気持ち

夫は私のことを無視するようになった。

タクミと私の関係には、何も気が付いていないが、私が誰かを好きになっていたことをわかったのかもしれない。

夫はどんな気持ちになっているのだろうか。

もしかしたら、「もう離婚をしたい」と思っているのかもしれない。

でも、そんなことを私がほのめかしたりはしない方が良いだろう。

夫の離婚への気持ちが固まるまで、待っていよう。

無視を決め込んだ夫は、今の私には扱いやすいのだ。夫をもう愛していない私には。

でも、夫の無視はどのような気持ちの表れであろうか。

ミサキの気持ち

ミサキは、私がタクミと会ったことをどのように思っているのだろう。

ミサキとタクミは、いまだ夫婦のきずなでつながっていたのだろうか。

離婚したといっても、ミサキはタクミを愛している可能性があるが、タクミはミサキに愛を感じているのか。

いや、そんなはずなんかない。そうなら、私を抱くことはないだろう。

でも、問題はミサキの気持ちだ。

ミサキがタクミを愛しているのであれば、私はタクミを奪う、憎き存在になる。

それを気づいたミサキはどんなことをするだろうか。その答えは先ほどのミサキとの邂逅にあった。

ミサキは私と会った時、私の周辺を探り、タクミと連絡しているか確認していた。

タクミから連絡用としてもらった携帯電話をミサキの前で使うことをしなかったが、その時、ミサキが意外そうな顔をしていたではないか。

このことでも、タクミの近くに私がいるのではないかと疑っていたと思われる。

 

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